2026年7月5日、北海道・札幌で開催された第8回日本在宅医療連合学会大会にあわせて、当院の看護師2名が「在宅NPWT認定教育制度」の認定を取得しました。在宅の現場で、より安全に・確実に陰圧閉鎖療法(NPWT)による創傷ケアを提供できる体制が整いましたので、ご報告いたします。
NPWT(陰圧閉鎖療法)とは?
NPWT(Negative Pressure Wound Therapy/局所陰圧閉鎖療法)とは、創部を専用のドレッシングで密閉し、持続的に陰圧をかけることで治癒を促す治療法です。滲出液や間質液を除去して浮腫を軽減し、創底や創周囲の血流を増やすことで、難治性の褥瘡や慢性創傷の治癒を後押しします。
在宅医療では2020年6月1日から保険適用となり、通院が難しい患者さんでも、住み慣れた自宅で難治性創傷の治療を受けられるようになりました。
NPWTはなぜ創傷治癒に役立つのか
NPWTの働きは、主に次の作用機序で説明されます。
創部に管理された陰圧を持続的に加えることで、過剰な滲出液や感染性の老廃物を除去し、浮腫を軽減します。あわせて創底や創周囲の毛細血管の血流を増やし、肉芽形成を促すことで、治癒に向かいやすい創環境を整えます。
こうした効果から、NPWTは難治性創傷の治療選択肢の一つとして広く用いられており、日本褥瘡学会の褥瘡予防・管理ガイドラインでも取り上げられています。一方で、創傷の種類や患者さんの状態によって適応や効果は異なり、すべての創に一律に有効というわけではありません。だからこそ、医師による適切な評価と、創の状態を見極めながらケアを行う看護師の役割が重要になります。この「見極め」の力を高めるのが、今回の認定取得の意義でもあります。

NPWT-看護師の実施要件
NPWTを在宅で安全に行うには、看護師の実施要件が定められています。もともとNPWTのドレッシング交換を担える看護師は、「創傷管理関連の特定行為研修を修了した看護師」または「皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)」に限られていました。
しかしこの要件では担い手が限られ、在宅NPWTがなかなか普及しないという課題がありました。そこで日本在宅医療連合学会は、これらの研修を未修了の看護師でも、必要な知識と技能を体系的に習得できるよう「在宅NPWT認定教育制度」を新設しました。
つまり認定の位置づけは、次のように整理できます。
- 特定行為研修(創傷管理関連)修了者・皮膚排泄ケア認定看護師:もともとNPWT管理が可能
- 在宅NPWT認定取得者:上記に加え、この制度により在宅での単回使用NPWTのドレッシング交換を担えるようになった看護師
いずれの場合も、実施はあくまで医師の指示のもとで行われ、創傷治療・陰圧閉鎖療法に十分な経験のある医師と連携し、異常を検知した際は速やかに医師へ報告・指示を仰ぐことが前提です。看護師の判断で単独対応することはありません。この安全管理の枠組みこそが、認定制度の核心です。
在宅NPWT認定の対象者と取得までの流れ
認定対象者
以下の3つの条件を満たす看護師、および医師
- 日本国の看護師免許を有すること
- 看護師実務経験2年以上の者であること
- 看護師特定行為研修、皮膚排泄皮膚・排泄ケア認定看護師教育課程を未修了の者
資格認定および更新
資格は有効期間を5年とし、更新申請は有効期間の最後の1年間におこなうこと。
認定講習および申請費用について
認定講習および申請費用
在宅医療連合学会員:講義 E-learning無料、講習会OSCE 5,000円
在宅医療連合学非会員: 講義E-learning 5000円、講習会OSCE 5,000円
新規登録料5000円
更新料5000円
あしたの看護師当院看護師は在宅医療連合学会に入会しています。
定期的に開催される褥瘡のセミナーも受講でき、難治事例の改善方法についても学べており、日々の診療補助に役立っています。
E-learning(全10回・11コマ・約5時間)
創傷ケアの基礎から陰圧閉鎖療法の実際まで、体系的に学ぶオンライン講義です。総再生時間は約5時間の動画を含む全11コマで構成され、各単元ごとに確認テストが課されます。
NPWT認定制度について、詳しくは日本在宅医療連合学会の公式ページでご確認いただけます。
▶ 在宅NPWT認定制度について|日本在宅医療連合学会
あしたの在宅クリニックの創傷・褥瘡ケアへの姿勢
当院は、在宅における褥瘡・難治性創傷のケアに力を入れています。
今回の認定取得により、医師の指示のもと、看護師が在宅でNPWTのドレッシング交換を安全に担える体制がさらに強化されました。
褥瘡や難治性創傷は、在宅療養を続けるうえで患者さんとご家族の大きな負担となります。「通院が難しいから」と治療をあきらめる必要はありません。適切な評価と治療、そして多職種の連携があれば、住み慣れた自宅でも専門的な創傷ケアを受けることができます。
連携医療機関・訪問看護ステーションの皆さまへ
「退院後の創傷管理を任せられる在宅医を探している」「訪問看護で対応しているが医師の指示のもとでNPWTを導入したい」——そんなときは、ぜひ当院にご相談ください。
こんな患者さんのご紹介をお待ちしています。
- 難治性の褥瘡(ステージⅢ・Ⅳ、ポケット形成など)で在宅療養中の方
- 退院時にNPWTを継続する必要がある方
- 下腿潰瘍・糖尿病性足潰瘍などの慢性創傷で通院が難しい方
- 創傷ケアの見直し・セカンドオピニオンを希望される方
医師と在宅NPWT認定看護師が連携し、必要に応じて専門医療機関とも協力しながら、在宅での切れ目のない創傷ケアをお引き受けします。診療情報提供書のやりとりや初回訪問の調整もスムーズに対応いたします。
FAQ
Q. NPWT(陰圧閉鎖療法)とは何ですか?
A. 創部を密閉して持続的に陰圧をかけ、滲出液の除去と血流改善によって難治性の褥瘡や慢性創傷の治癒を促す治療法です。2020年6月から在宅医療でも保険適用となっています。
Q. 在宅で看護師がNPWTを行うには資格が必要ですか?
A. はい。もともとは創傷管理関連の特定行為研修修了者、または皮膚・排泄ケア認定看護師に限られていましたが、日本在宅医療連合学会の「在宅NPWT認定教育制度」を修了した看護師も、医師の指示のもとで単回使用NPWTのドレッシング交換を行えます。
Q. 在宅で使えるNPWTの機械にはどんな種類がありますか?
A. PICO(キャニスター不要の携帯型)、SNaP(静音性の高い非電動型)、UNO(サイズ選択式の携帯型)などがあり、創部の形状や皮膚の状態に応じて選択します。

