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高齢者の脱水・熱中症、在宅でどこまで対応できるか|往診依頼が増えています

目次

はじめに:脱水・熱中症での往診依頼が増えています

こんにちは、あしたの在宅クリニックです。

本格的な夏を迎え、当院でも脱水や熱中症を疑う往診依頼が増えています。

「食事量が落ちている」「ぼんやりしている」「熱があるがコロナやインフルエンザは陰性」——こうしたご連絡の背景に、脱水が隠れているケースが少なくありません。

在宅で療養されている高齢の患者さんは、脱水・熱中症のハイリスク群です。そして脱水は、それ自体の問題にとどまらず、高血糖高浸透圧症候群(HHS)や急性腎障害といった重篤な病態の引き金にもなります。

この記事では、日々利用者さんのそばにいらっしゃるご家族・ケアマネジャー・訪問看護師・ヘルパーの皆さまに向けて、早期発見のポイント、「脱水の先」にある見逃したくない病態、そして様子見・往診・救急要請の見極めについて整理します。

なぜ在宅高齢者は脱水・熱中症に弱いのか

高齢の患者さんが脱水に陥りやすい背景には、加齢に伴う生理的な変化と、生活・薬剤の要因が重なっています。

加齢による生理的要因

  • 口渇感の低下: のどの渇きを感じにくくなり、脱水が進んでも本人は「大丈夫」とおっしゃることが多くあります
  • 体内水分量の減少: 高齢者の体内水分量は体重の約50%程度まで低下し(成人は約60%)、もともとの「貯金」が少ない状態です
  • 腎機能の低下: 尿の濃縮力が落ち、水分を保持しにくくなります
  • 発汗・体温調節機能の低下: 暑さに対する体の反応が鈍くなります

薬剤の影響

在宅患者さんの多くが服用している薬剤の中には、脱水を助長しうるものがあります。

薬剤注意点
利尿薬(フロセミド等)水分・電解質の喪失を促進
SGLT2阻害薬尿糖排泄に伴う浸透圧利尿。シックデイには特に注意
下剤過量で水分喪失
一部の向精神薬・抗コリン薬口渇、体温調節への影響

心不全などで水分制限の指示が出ている患者さんでは、「制限を守りすぎて夏場に脱水」ということも起こりえます。夏場の水分制限や利尿薬の量については、自己判断で変更せず、主治医にご相談ください。

環境・心理的要因

「電気代がもったいない」「冷房は体に悪い」とエアコンを使いたがらない方は少なくありません。独居や老々介護の世帯では、室温管理そのものが難しいこともあります。訪問時に室温を確認するだけでも、大きな予防的介入になります。

高齢者が脱水に弱い3つの理由(生理的要因・薬剤の影響・環境や心理的要因)を示した図解

現場で気づくサイン:早期発見のチェックポイント

高齢者の脱水は、典型的な「のどが渇く」「大量の汗」という形では現れないことが多く、「なんとなくいつもと違う」がもっとも重要なサインです。

訪問時に確認したい観察項目

項目見るポイント
意識・活気ぼんやりしている、反応が遅い、傾眠傾向
食事・飲水食事量の低下、飲み物を残す
口腔内舌の乾燥、唾液の粘り
皮膚腋窩(わきの下)の乾燥、皮膚のハリ低下
尿回数の減少、色が濃い
バイタル微熱、頻脈、血圧低下(普段との比較が重要)
環境室温・湿度、エアコンの使用状況、飲み物の置き場所

普段の状態を知っている皆さまだからこそ、「いつもと違う」に気づけます。数値だけでなく、「昨日より反応が鈍い気がする」という肌感覚は、私たち医師にとって非常に価値のある情報です。

見逃したくない「脱水の先」にある病態

脱水は入口です。その先で、以下のような病態に進展することがあります。ここが夏の在宅医療でもっとも注意している部分です。

高血糖高浸透圧症候群(HHS)

高齢の2型糖尿病患者さんで、夏場に増える緊急性の高い病態です。脱水と高血糖が悪循環を形成し、数日〜数週間かけてじわじわと進行します。

  • 典型像:高齢2型糖尿病+脱水+「意識がぼんやり」「反応が鈍い」「傾眠」
  • 診断の目安:血糖値 600mg/dL以上、有効血漿浸透圧 320mOsm/kg以上、著明なケトアシドーシスを伴わない(※若年1型に多い糖尿病ケトアシドーシス〈DKA〉との違い)
  • 注意点:糖尿病の既往が軽度でも(食事療法のみ、内服のみでも)発症しえます。「認知症が進んだのかな」と見過ごされやすいのが怖いところです

糖尿病のある利用者さんが夏場にぼんやりしてきたら、まず血糖測定を。訪問看護師さんが測定した血糖値が異常高値であれば、その時点でご連絡いただければ往診で対応します。

脱水を契機とした急性腎障害(AKI)

脱水で腎血流が低下しているところに、利尿薬+RAS阻害薬(ACE阻害薬/ARB)+NSAIDsの3剤が重なると、急性腎障害のリスクが大きく上がります。夏場に膝や腰の痛みで市販のNSAIDsを飲み始めた、というケースは要注意です。お薬手帳に載らない市販薬の使用も、気づいたら共有いただけると助かります。

電解質異常(低ナトリウム血症など)

「水分を摂りましょう」と声かけした結果、お茶や水だけを大量に飲んで低ナトリウム血症になるケースがあります。倦怠感、食欲低下、ひどくなると意識障害と、脱水と似た症状を呈するのが紛らわしい点です。食事が摂れていない方の水分補給は、経口補水液や味噌汁など塩分を含むものを組み合わせるのが基本です。

発熱=熱中症と決めつけない:誤嚥性肺炎・尿路感染症

夏の発熱がすべて熱中症とは限りません。脱水で唾液が減ると口腔内の細菌が増え、誤嚥性肺炎のリスクが上がります。また尿量が減ると尿路感染症も起こりやすくなります。

発熱に加えて「痰がらみ・呼吸の変化」「尿の濁り・排尿時の様子の変化」があれば、その情報もあわせてお知らせください。鑑別が早くなります。

高齢者の脱水から進展しうる病態(高血糖高浸透圧症候群・急性腎障害・電解質異常・感染症)を示した図解

様子見・往診依頼・救急要請の見極め

もっともご相談が多いのがこの判断です。あくまで目安ですが、以下のように整理しています。

STEP
【様子見+こまめな観察】でよいことが多いケース
  • 意識清明で会話がいつも通り
  • 飲水を促すと飲める、食事も半分以上摂れている
  • バイタルが普段と大きく変わらない

→ 水分・塩分補給と室温調整を行い、次回訪問時まで経過観察。ご家族・ヘルパーさんと共有しておくと安心です。

STEP
【当院へ連絡・往診検討】していただきたいケース
  • 半日〜1日以上、飲水・食事がほとんど進まない
  • 微熱が続く、尿が半日以上出ていない・極端に少ない
  • ぼんやりする、反応が鈍い(呼びかけには応じる)
  • 糖尿病の方で血糖が普段より明らかに高い
  • 嘔吐や下痢で水分が摂れない

→ 在宅での点滴・検査で対応できる段階です。迷ったらこの段階でご連絡ください。「これくらいで呼んでいいのかな」という遠慮が、結果的に重症化につながることがあります。

STEP
【救急要請をためらわないでいただきたい】ケース
  • 呼びかけへの反応が明らかに悪い、意識がない
  • けいれん
  • 体に触れると熱い(高体温)のに汗をかいていない
  • 血圧低下、頻脈が著明でぐったりしている

→ 熱射病や高度の脱水・HHSが疑われ、入院治療が必要な段階です。救急要請と並行して当院にもご一報いただければ、救急隊・搬送先への情報提供(既往・内服・ACPの情報共有など)を行います。

在宅でできる治療:経口補水から点滴・皮下輸液まで

「脱水=すぐ入院」ではありません。早めに気づいていただければ、在宅で対応できることは多くあります。

  • 経口補水療法: 飲めるうちが勝負です。経口補水液を少量ずつ頻回に
  • 末梢静脈からの点滴: 往診時に開始し、訪問看護師さんと連携して継続管理します
  • 皮下輸液: 血管確保が難しい方などで選択肢になります。
  • 在宅での検査: 血糖測定、血液検査(電解質・腎機能など)、尿検査は在宅で実施可能です。HHSや腎障害の評価もできます。

一方で、入院での集中的な治療が望ましい状態であれば、その判断も含めて速やかに対応します。

当院の対応体制:即日の往診開始・24時間対応

あしたの在宅クリニック(品川区豊町)は、契約後の患者様には24時間365日対応の在宅療養支援体制をとっており、脱水・熱中症を疑うご相談には即日往診が可能です。初めてお問い合わせいただく方は、当日日中のご連絡をいただければ、訪問診療を即日開始することもご相談いただけます。当院は品川区・大田区・目黒区を中心に対応しています(港区や世田谷区も一部対応)。

ご連絡の際、以下の情報があるとスムーズです。

  • いつから、どんな様子か(食事・飲水・尿・意識)
  • バイタル(測定できていれば)
  • 既往歴・内服薬(特に糖尿病、利尿薬の有無)

まとめ

  • 在宅高齢者の脱水は「なんとなく元気がない」から始まることが多い
  • 脱水の先には、高血糖高浸透圧症候群(HHS)・急性腎障害・電解質異常・感染症といった病態が控えている
  • 糖尿病のある方の「ぼんやり」は、まず血糖測定を
  • 「飲めない・食べられないが半日以上」で往診検討、「反応が悪い・けいれん・高体温で無汗」は救急要請を
  • 早期であれば、点滴・皮下輸液・検査など在宅での対応が可能です

品川区・大田区・目黒区で訪問診療・往診をご検討の際は、あしたの在宅クリニックまでお気軽にご相談ください。

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